千葉市立高洲第三小学校 校長 武井康至先生 インタビュー

小さな成功体験を積み重ねて、夢を叶える子どもへ「千葉市立高洲第三小学校」

海浜ニュータウンとして1970年代に団地造成が進んだこの地域では、近年の再開発で再びファミリー層の人口を増やしている。そんな高洲地域にある「高洲第三小学校」では、「夢ひらき、かがやく子」を教育目標に掲げ、子どもたちが直接体験できるプログラムを積極的に取り入れている。「高洲第三小学校」の武井校長先生に日々の取り組みから街の魅力までお伺いした。

街の開発、子どもたちの成長に合わせて

千葉市立高洲第三小学校 校長 武井康至先生
千葉市立高洲第三小学校 校長 武井康至先生

――学校の概要について教えてください。

武井先生:本校は1974(昭和49)年5月1日に開校した学校で、今年度は全校で13学級415名、通級指導教室も4クラスあります。1970年代の高洲団地造成による人口増加を受け、当時この地区では「高洲小学校」が第一から第四まで作られました。現在は統合され、3校になりましたが、2010(平成12)年の駅前再開発に伴って高層マンションなども増え、再び児童数も増加して今に至っています。

「千葉市立高洲第三小学校」の外観
「千葉市立高洲第三小学校」の外観

もともとこの周辺は避暑地として有名で、島崎藤村や森鴎外などの文士たちが集まる別荘があったり、現皇太子である浩宮さまが潮干狩りに訪れたこともあるそうです。

――教育目標には何を掲げていらっしゃるのでしょうか?

武井先生:今は夢をもつことが難しい時代といわれていますが、本校ではあえて「夢ひらき、かがやく子」という教育目標を掲げ、「一人一人が主人公」を合言葉に毎日の教育活動をしています。夢をもち、具体的な目標をたてて、そこに向かって頑ることのできる子どもに育つには、身近で具体的な目標をたて小さな成功体験をいくつも積み重ねることが大切です。今、校長室の前には全校児童が自分で書いた「私の夢」が掲示されています。私も毎日彼らの「夢」を前に、励まされ勇気づけられるような気持ちです。

校長室の前に掲示されているみんなの夢
校長室の前に掲示されているみんなの夢

バーチャルではなくリアルな体験を通してこそ学べること

――特徴的な教育活動はありますか?

武井先生:キャリア教育の一環として、6年生が幕張新都心の企業で職場体験をさせてもらっています。セイコーやイオン、NTT東日本、キヤノン、IBMなど名だたる一流企業のみなさんにご協力いただき、なかなか普段は足を踏み入れることができない仕事の現場に行かせてもらえて、子どもたちにとっては非常に貴重な経験になっているようです。最初にどの企業に行きたいのか、なぜその企業を希望するのか、子どもたち一人一人にエントリーシートを書かせて、グループ分けをしています。

学校の下駄箱には、教育目標が掲げられている
学校の下駄箱には、教育目標が掲げられている

例えばセイコーでは時計、キヤノンではカメラの組み立て体験をしたり、イオンでは商品の品出し、NTT東日本では災害時の通信網復旧のデモンストレーションなど、リアルな体験を通して「仕事」や「働く」ということを身近に感じられる機会をいただいています。私も長年教師をしていますが、こんな風に大企業の現場に行ける授業、しかも本校の子どもたちのために色々と内容を考えてくださっている学習というのは初めてで、非常に有り難く感じています。

また別の機会には、職業能力開発協会から大工さんと和菓子職人さんを派遣していただき、技能を身につけて職人として仕事をする方々の話を聞き、実際にものづくりを体験する機会も設けています。この2種類の仕事人を間近で見ることで、将来の自分の就きたい仕事のイメージを持てるのではないかと考えています。

ゲームやSNSなどに囲まれて育っている現代の子どもたちにとって、このように実際に体験する、バーチャルではなくリアルな経験を積むことは非常に大切だと考え、本校では日頃から直接体験を取り入れた授業を心がけています。

――健康教育にも力を入れていらっしゃると聞いています。

武井先生:例えば、歯磨きの仕方などは多くの学校で取り組んでいる健康教育の一つです。本校では、ただ歯磨きの大切さを声高に伝えるでなく、“なぜ大切なのか”理由を伝えることで、子どもたちの知的理解も進み、より納得して取り組むと考えています。 また今年度は2年間取り組んできた「いのちや健康の大切さに気付き、主体的に取り組む子どもの育成」というテーマで、食育と保健指導に関する研究報告会を本校で開催いたしました。2年生のクラスでは、噛むことの大切さを理解するというテーマで、子どもたちにスルメを渡して普通に食べた時と30回噛んでから食べた時の味の違いを実感してもらうなど、いろいろと工夫を凝らしたユニークな研究授業を行いました。

「健康」というのは身近なテーマであるものの、算数や理科といった答えが出る科目とは違い、なかなか教えるのが難しい教科です。先に出した2年生の授業でも、担任の先生が職員室でガムや乾燥ホタテなど様々な食材を噛んでは首をかしげ、授業の準備をしていました。

ランチルームの様子
ランチルームの様子

――HPには給食のレシピなども載せていらっしゃいますね?

武井先生:各家庭でもぜひ活用してもらいたいと、子どもたちに人気のレシピを載せています。健康教育は、学校で子どもたちが理解して終わりではなく、家に帰っていかに実行に移せるかが大切です。つまり各ご家庭の協力が不可欠であり、学校と家庭の連携が必要な教育でもあります。

「運動・栄養・睡眠」のなかで自分に足らないものを子どもたち自身がに考え、それを1週間改善してみようという取り組みもありました。これは保護者の方にもご協力いただき、家庭では子どもたちがどんな努力をしていたのかを報告してもらいました。親子で取り組む課題をきっかけに、健康について家族みんなで考える良い機会になったのではないかと思います。

ニュータウンだからこそ地域で作り上げる「新たな故郷」

――地域との連携についてはいかがでしょうか?

武井先生:現在、子どもたちの登下校を見守ってくださっているのが、地域の方々や保護者会からなる「セーフティウォッチャー」の方々です。この方々に手作りの「あいさつ名人認定証」という名刺大のカードをお渡しして、元気に挨拶ができた子どもに手渡ししてもらっています。これは毎日子どもたちの安全のためにご協力いただいている方々に、子どもから自発的に挨拶をし、感謝の気持ちを表してほしいという思いから始めたものです。

あいさつ名人認定証
あいさつ名人認定証

子どもからすると、学校外の場所で自分を見守ってくれている人がいる、きちんと評価してくれる人がいるという心強い思いがするようで、大きな声で挨拶できる子が増えたようです。ちなみにこのカードは私が作成したのですが、イラストには「挨拶」という手話を採用しました。

――保護者の方々や子どもたちの様子について教えてください。

教室の様子
教室の様子

武井先生:保護者の皆さんも学校の活動に協力的、かつ積極的に関わってくださっています。その安定した雰囲気が子どもたちにも伝わるのか、子どもたちはみな素直で人懐っこい性格ですね。実は本校の児童はみんな集合住宅から通ってきており、戸建の家に住んでいる児童は1人もおりません。それが理由かどうかは分かりませんが、非常にまとまりがあって日々の生活も落ち着いています。

――先生のお気に入りの場所などはありますか?

武井先生:お気に入りと言うとちょっと違うかもしれませんが、この地域には毎週日曜日に開かれている「こどもカフェたかす」という、子どもたちが遊びに行ける居場所があります。千葉市や社会福祉協議会などが協力して行なっているモデル事業で、小・中学生を対象に公共施設や空き店舗などを活用して、大人が見守るなかで子どもたちが気軽に話したり遊んだり、時には勉強をしたりする場所を提供しています。

「こどもカフェたかす」のチラシ
「こどもカフェたかす」のチラシ

私も行ってみたことがありますが、子どもたちが自由に出入りして、ボードゲームで遊んでいたり、外でドッチボールやダブルダッチをしていたり、とても伸び伸びと過ごしていました。子どもにとって、親や先生以外の大人と触れ合うことは大切ですし、親御さんにとっても安心して外に出せる場所があるのは助かりますよね。「こどもカフェたかす」は、高洲コミュニティセンターの敷地内にあって、外遊びできるスペースも広いのでお勧めです。

――この街の魅力はどんなところでしょうか?

武井先生:この地域は再開発で新しいマンションが建ったことで転入してきた人たちと、もともとの高洲団地に暮らす人たちが混在しています。ただ昔からの住人の方々も団地ができた時に転入してきた訳ですから、実は同じ転入組。だからかもしれませんが住人の方々に「ここを新たな故郷にしよう」という思いがあるようで、地域の行事やイベントなどを自分たちの手で新たに作ろうという動きが盛んです。例えば、マンションや自治体単位で夏祭りを企画し、近隣の公園で開催して多くの親子や高齢者の方々が集まったり、住人同士の交流も深まっているようです。

また毎年5月5日には「5・5(ゴーゴー)まつり」という海浜地区全体の大きなイベントが開かれ、高洲コミュニティセンター周辺は歩行者天国になって、稲毛海岸の駅前広場にもお客さんでいっぱいになります。この「5・5まつり」自体が、新しい海浜地区で生まれ育った子どもたちの心に残る「思い出とふるさと意識」を作りたいという思いからスタートしており、この地区の人たちの思いが詰まっているイベントです。 こんな風に、地域の方々が街づくりや子どもの思い出作りに一生懸命になってくれるということ自体、住民にとって特に子育て中の家庭にとっては暮らしやすい環境が整っていると思います。

武井康至先生
武井康至先生

高洲第三小学校

千葉市立高洲第三小学校 校長 武井康至先生
所在地:千葉市美浜区高洲3-3-11
電話番号:043-278-1912
URL:http://www.cabinet-cbc.ed.jp/school/es/079/
※この情報は2017(平成29)年12月時点のものです。