ママと子どもが“本”を通じてつながる場所「柏の葉 本のたからばこ~Family Library~」
TX「柏の葉キャンパス」駅の南口側にある、三井不動産のモデルルーム兼体験学習施設「柏の葉ライフミュージアム」。その建物の2階の一角に、2015(平成27)年秋、絵本を楽しみながら親子で過ごせるフリースペース「柏の葉 本のたからばこ~Family Library~」が誕生した。
この場所を企画・運営しているのは、TX沿線で親子のためのさまざまな場所作り、きっかけ作りに取り組んでいるママさんグループ「ままてぃ」。今回はその代表であり、柏の葉で“現役ママ”として子育て中の篠原晋寧さんに、「本のたからばこ」に込めた思いと、地元の魅力についてお話を聞いた。
―「柏の葉 本のたからばこ Family Library」はどんな施設なんでしょうか?
「柏の葉キャンパス」駅周辺はもともと「田中地区」と呼ばれる地区の一部なんですが、かなり広い地域なので、児童館や近隣センターまでの距離がすごく離れていました。近隣センターなどは、車で15分から20分もかかるところにあります。そんな状況の中で駅前にマンションができて、ベビーラッシュになり、子育て等の施設が全然足りていないという状況がずっと続いていました。
私もいま、子育ての真っ最中なのですが、子育ての時期は24時間地域にいることが多いですから、地域の誰かとつながっていかないと、どうしても閉鎖的になってしまうんですね。楽しく育児をするためには、同じ育児をしている皆さんと、「つながる」ことが絶対に必要だと思うんです。
商業施設はあるので、そこが主催するイベントや、有料で参加するようなイベントはあるにはあるんですが、そこだと「つながり」までは行かなくて、「参加者と運営側」ということになってしまいがちです。そういった意味で、「やっぱり駅の近くに近隣センターやコミュニティセンターが必要だよね」という声が、ママさんの中に増えてきていたんです。
ただ、これを行政に陳情して作っていただくのを待つと、相当な時間がかかってしまう。我々が子育てを終えてから完成しては意味が薄れますから、「じゃあ、自分たちで作ってしまえばいいんじゃないの?」という話になり、ママさんが集まった実行委員会を立ち上げて、ここをつくることになったのです。どんなスペースにするか、コンセプトからネーミングや本の選定まで、実行委員会メンバーで一緒に考えました。
何を作るか考えるにあたって、実際にママさんで集まって意見を聞くと、「一番欲しいのは近隣センターだよね」「図書館がほしい」「子どもたちが集まる場所も」「ママが交流できる施設も」なんて意見が出て、じゃあ、それを全部叶えられるのは何か、ということを考えたところ、「本をキーワードにしたコミュニティスペース」ということに行き着いたんです。
―ママたちが作った、手作りのコミュニティスペースなんですね。でも、それが三井不動産のモデルルーム内にあるというのは、どういった理由からなんでしょう?
これは我々「ままてぃ」がこれまで色々な活動をしてきた中で、三井さんといろいろな関わりがあり、ご協力もいただいていましたので、先ほどのような案をまず真っ先に、三井さんに相談をさせてもらったんですね。「こんなのを作りたいんですけれど、どこか場所は無いですかね?」ということで。
そうしたら、三井さんがちょうどモデルルームを新しくされるという時でして、2階に子どもが遊ぶためのスペースを作って、一角に本を置こうと考えていらっしゃるという話だったんですね。「じゃあ、その話に乗せさせていただきます」ということで、三井さんの「柏の葉未来のひみつきち」という遊び場の横に、「本のたからばこ」が並ぶという、今の形になっています。
我々もボランティアで動いているので、すべての時間帯に常駐することはできないんですが、そんな時には三井さんが施設の中の一部として管理・運営をしてくださるなど、全面的に三井さんの協力があって、成り立っている施設でもあります。
―オープンから4か月ほどが経過しているということですが、どのような方が利用されているのでしょう?
利用対象については特に制限は設けず、「親子一緒」であれば、地域は限らずどなたでもご利用いただけます。実際いらっしゃっているのはほとんどが未就学児とそのお母さんですけれども、夕方からは幼稚園帰りの親子が来たり、時には近くのおじいちゃんが一人でいらっしゃって、絵本をじっくり眺めていくという姿もあります。本自体が乳幼児向けなので、小学生未満が多いですね。
―利用者の皆さんはどれぐらいの頻度で来らていますか?
ご近所の方だと、週に2~3回来ている方もけっこういらっしゃいます。飲み物も飲めますから、ほとんど児童館の感覚で利用していただいています。もちろん、週末などはモデルルームのお客さんも寄られますし、週末は「柏の葉未来のひみつきち」に保育士さんが常駐しているので、そこで子どもを預かってもらって、遊ぶのと一緒に、ここの本も楽しんでいくという感じです。
―イベントも開催しているようですが、どんなものがあるのでしょうか?
イベントはいろんな団体の協力を得ながらやっていまして、まずひとつは、ここから徒歩20分くらいのところにある「ひかり隣保館」という保育園の先生に毎月1度来ていただいて、絵本の読み聞かせ、手遊び、パネルシアターなどをやっていただいています。このほかにも、柏市で読み聞かせをしている、「ブックスタート」さんというボランティア団体の方にも、月に1回のペースで読み聞かせに来ていただいています。読み聞かせは毎月必ず、何回か行っています。
オープンして間もないので、今はまだイベントの数は少ないんですが、この街自体がかなり子供向けのイベントの多い街で、いろんな団体からイベントなどの打診もいただいていますので、これからは少しずつ、開く回数も増やしていきたいと思っています。そのほかにも、我々「ままてぃ」が運営しているイベントもありますから、そちらもぜひご参加いただきたいですね。
―「ままてぃ」で主催するイベントについて、もっと詳しく教えていただけますか?
一番大きなイベントとしては、「職ママフェスタ」というのをやっていて、これは駅前のホテルで開催しているんですが、毎年沢山の方にご参加いただいています。これは何かと言えば、私自身もそうだったんですが、「働きたいのに働けない」とか、「働いているけど、なんだかモヤモヤする」とか、仕事に関する不安や悩みを抱えているママさんって、けっこう多いんです。そういった方達に向けたセミナーでして、本当に普通の“働くママ”がパネリストになるんですけれど、これを通じて、これから復帰する皆さんの不安を払拭できるような力になればな、と思っています。
あと、去年は夏に駅前で「マナビーヤ!フェスタ」というイベントを開きまして、この時には2日間で250組ぐらいの親子さんに来ていただきました。内容としては、音楽の演奏をしたり、本の読み聞かせをしたり、工作や農業体験をしたり、子育てや学習について考えるセミナーを開いたり、というものだったんですが、これも続けていきたいと思っています。ほかにも、「リトミックの会」や「温育カフェ」というものなど、日頃からいろいろやっています。
「ままてぃ」のイベントはすべて「ママさんとお子さんが一緒に楽しめるイベント」なんですけれども、私たちは「ママさん自身が楽しく過ごせていれば、子どもたちも楽しく過ごせるはず」と考えているので、主にママさん達自身が楽しめるようなものをやっています。その中で、この「本のたからばこ」も、積極的に使っていきたいですね。
―こちらに並んでいる絵本は、どのようにして集めたものでしょうか?現在何冊ぐらいありますか?
ここの本の半分以上は、地域の方からの寄付で集まったものです。子どもって年齢によって読む本がはっきりしているので、 “賞味期限が切れた本”はどの家にもあって、それを皆さんが箱に入れて、大量に寄付してくださるんですね。しかもご家庭にあったものなので、きれいなものばかりなんです。
ほかにも、三井さんから寄付していただいたものもあって、全部でだいたい1,500冊を並べています。これで棚がほぼ埋まったので、今後はこれぐらいで維持していきたいと思っています。
―今後の「本のたからばこ」の展開について、何か予定されていることはありますか?
「本のたからばこ」については、このまま、みなさんが「本」をキーワードにしてここでコミュニケーションを取ったり、コミュニティ作ったりできるスペースとして、今までどおり継続していければ、と思っています。
ただ、先ほど言ったとおり、いろいろなイベントは増やしていきたいと思っていますし、サークルをやりたいという方がいれば、ここをベースにして活動をして頂いても良いと思っていますし、今は本の貸し出しをしていませんが、人員や管理体制が整ったら、貸し出しもしていきたいと思っています。
―最後に、今後この柏の葉キャンパスエリアに住みたいという方に向けて、エリアの魅力やアドバイスをお聞かせください。
イメージ的には「郊外」と思われている方も多いと思うんですけれども、実際に来てみると「郊外」とは全然感じないくらい便利なところで、びっくりされると思います。でも、都心みたいにキツキツはしていないですから、ゆとりがあって、子育てはしやすいですね。
子育てする上で一番の魅力に感じているのは、「安全」だということです。都心だと、子どもと歩いている時に手を離すなんて、とんでもない事じゃないですか。でもここだと、ママ達は子どもたちの手を離して自由に歩かせたりもしています。歩道の道幅が十分に広いので、子どもたちがはみ出して車と接触する心配はほとんどないですね。
もちろん、都心に出るのにも便利ですし、買い物も便利です。便利でありながらもほどよく緑があります。どの年代の方にとっても、暮らしやすいと思います。ただ、新しいエリアゆえに行政の施設はあまり整っていなくて、それが不便だと感じる部分もありますが、そういう面があるからこそ、自主的な活動が盛んです。週末になると何かしら楽しそうなイベントが開かれていたりして、ご近所同士の交流は生まれやすいと思います。
「つながり」があれば自然にあいさつも生まれますし、同じマンションの住民同士で顔見知りになれば、心強いですよね。そういう「ほどよい交流がある街」という部分も、とても心地よいと感じています。
今回、話を聞いた人
ままてぃ
代表 篠原晋寧さん
所在地:千葉県柏市若柴173-5 柏の葉キャンパス149街区5 柏の葉ライフミュージアム2F
電話番号:なし
※問い合わせはメール info@mamatx.net まで
※2016(平成28)年1月実施の取材にもとづいた内容です。記載している情報については、今後変わる場合がございます。