校長先生インタビュー

国際理解のための様々な取り組みを行なう「船橋市立葛飾小学校」

古くから国際教育に力を入れ、多くの帰国子女や外国籍の児童を受け入れてきた「船橋市立葛飾小学校」は、インターナショナルPTAの協力も得て、国際理解のための様々な取り組みを行なっている。また地域の人たちが寄付金を集めて校舎を建設したという歴史に端を発し、地域の方々やOB/OGたちが伝統的に学校をサポートする体制が整っている。そんな「葛飾小学校」の河合校長先生に、日々の教育活動や街の魅力についてお伺いした。

地域の人々の思いが結集し開校した「船橋市立葛飾小学校」

――学校の概要を教えてください。

本校は1892(明治25)年、葛飾村にあった「二子小学校」と「西海神小学校」の2校を併せて開校しました。今年度126周年を迎えます。何代にも渡って本校に通うご家庭も多く、もうすぐ5代目が入ってくる頃ではないでしょうか。
現在、1年生6クラス178名、2年生5クラス172名、3年生6クラス188名、4年生6クラス199名、5年生6クラス213名、6年生6クラス224名、くすのき(特別支援)学級1クラス4名、合計1,178名という大所帯で日々の教育活動に励んでおります。

船橋市立葛飾小学校
船橋市立葛飾小学校

船橋市教育委員会より、2013(平成25)年から10年間の長期研究指定を受け、「国際性豊かな児童の育成」という主題のもと研究を続けています。もともと「帰国子女受け入れ推進のセンター校」として長い歴史を持つ本校は、全校生徒の1割が帰国子女という時代もあり、国際教育に関しては先駆的な役割を果たしてきました。国際的な人材の育成は、これからの教育にはさらに重要になりますので、ますます力を入れていきたいと思います。

「帰国子女受け入れ推進のセンター校」として長い歴史を持つ
「帰国子女受け入れ推進のセンター校」として長い歴史を持つ

――大変長い歴史をお持ちの小学校なのですね。

はい。開校当時、まだ校舎がなかった本校のために、村の人たちが寄付金1,000円(現在の5,000万円程度)を集め、今の「西船橋」駅前に校舎を建設してくださったそうです。開校式当日は花火を打ち上げたり、音楽隊の演奏があったりして、村の人たちは仕事を休んで様子を見に来る人も多く、まるでお祭りのようだったという記述が残っています。
その頃のこの辺りは畑に囲まれ農家ばかりの村だったことを想像すると、決して楽ではない暮らしのなか、学校のためにお金を出そうという心意気、みなさんの温かな気持ち、そして子どもの教育に対する熱意を感じます。

その気質を受け継いでいるのか在校生はもちろん、卒業生たちの母校愛、地域愛は強いですね。本校では「創立●年」ではなく「開校●年」というのですが、これも地域の方々が自ら資金を集め、篤志家に用地を提供していただいて「自分たちで開いた学校」という意識が伝統的に根付いてきていることを表しているのだと思います。

――やはり地域の方々との関わりは深いですか?

そうですね。特にPTAのみならず地域の方々、多くは卒業生やお子さんが通っていた方々だとは思いますが、新旧のお父さんたちがよく学校を訪れてくださることに驚きます。例えば例年水泳が始まる時期に、わざわざプール掃除に来てプールをピカピカに磨き上げてくださるんです。この他にも1年生の交通安全教室や運動会の準備などにも、積極的にご協力くださいます。この周辺は農家や自営業の方が多いこともあり、お父さんたちが仕事に都合をつけてよく学校に足を運んでくれます。こんな風に学校のために動いてくださるのは、子どもたちにとっても我々教職員にとっても非常に嬉しいことです。

もちろんお父さん以外にも、地域の見守りボランティアの方々が登下校を見守ってくださいますし、図書ボランティアのグループが本の修理や読み聞かせ、図書館の活用方法を教えてくださったりと、自主的に学校や子どもたちと関わってくださるので、大変助かっています。

海外から本校を目指して帰国する「帰国子女受け入れ校」

昇降口には手作りの万国旗が
昇降口には手作りの万国旗が

――帰国子女や外国籍の児童が多いとお聞きました。

現在、帰国子女が44名、外国籍の児童が13名在籍していまして、他の学校と比較して多いと思います。現在はもうないのですが、昔は近隣に官舎があり、海外赴任から帰国したご家庭が多かったことに端を発しているようです。海外赴任されていた方々が現地で「帰国したらどの学校に通おうか」「帰国子女に理解がある学校がいい」ということを話しているうちに、恐らく本校のことを口伝てに聞き、帰国する際にまず学校を決めてから住まいを決めるという方も多かったようです。

日本語に不安がある児童には、週に1回~多い時は週5回、マンツーマンで日本語を教える「日本語教室」があります。これは各児童の習熟度を見て頻度を決定するのですが、本校には常勤で1名の教師がおり、言語によってはもう1名派遣されてきます。船橋市教育委員会では5カ国語まで対応していますので、全く日本語を話せない児童でも、比較的早く日本語を習得できていると思います。

「日本語教室」
「日本語教室」

本校ではインターナショナルPTAという組織があり、帰国子女や外国籍の父母が任意で入れるコミュニティになっています。このインターナショナルPTAが、自分たちが苦労したこと・困ったことを冊子にまとめ、その解決法などをアドバイスする「手引き(生活編・学校編)」を配布しています。これは歴代のインターナショナルPTAの方々が、長らく外国に暮らしていた方々や初めて日本で生活する外国籍の方々に学校生活や日々の暮らしに役立ててもらおうと独自に作成しているもので、非常に好評です。帰国子女家族や外国籍家族のコミュニティとしても、インターナショナルPTAがしっかり機能しています。

帰国子女や外国籍の児童の学校生活を手助けする「インターナショナルPTA」の存在
帰国子女や外国籍の児童の学校生活を手助けする「インターナショナルPTA」の存在

――インターナショナルPTAは他にどのような活動をされているのでしょう?

毎年6月中旬に「ワールドフェア」というイベントを開いています。これは毎年違ったテーマを決めて、それについてインターナショナルPTAのメンバーが紹介するという世界の国々の理解を深めるための行事です。これまでには「世界の国旗」「世界の給食」といったテーマで開かれていて、例えば国旗なら「国旗に使用されている色の意味」「由来」などを分かりやすくまとめて、学校内に掲示をします。子どもたちはクラスや学年などでまとまってその掲示を見学しに行き、インターナショナルPTAのメンバーから説明を聞いたり、質問をしたりしながら、様々な国のことを知り学びます。

世界の国々への理解を深める「ワールドフェア」
世界の国々への理解を深める「ワールドフェア」

近年は児童の委員会活動として「国際理解委員会」ができまして、このワールドフェアのお手伝いもしています。メンバーの方と一緒に説明をしたり、スタンプラリーのスタンプを押したりといったことですが、外国籍の方と自然に交流ができたりと子どもたちにとっても国際理解が進むプラスの活動になっています。
また卒業生に声をかけて、ランドセルやピアニカや教科書など中学校で使わないものを寄付してもらい、6年生の途中から転校してくるお子さんや急な転勤などで準備ができなかったお子さんに貸与するという自助システムもあります。

途中入学をしてくる児童のために、卒業生から用具の寄付を受けて貸与する制度もある
途中入学をしてくる児童のために、卒業生から用具の寄付を受けて貸与する制度もある

毎年秋のバザーには、各国の民芸品のコーナーを出してくださったり、廃油を使った石鹸づくりのワークショップなどを開くなど、実に様々な活動をされています。

各国の民芸品
各国の民芸品

――国際理解のための教育活動はほかにもありますか?

毎月1回、「国際理解食」の日があります。これは昨年からはじめた試みで、外国籍や長らく海外に住まわれていた方から世界の国々のレシピを教えていただき、本校の栄養士がそのレシピを元に日本人の子どもたちに合うようなアレンジを加え、給食として全校生徒で食べるというものです。先月はバングラディッシュの家庭料理を教えてもらい、タンドリーチキンと野菜のピラフをみんなで食べました。今年6月はロシアでサッカーのW杯が開催されるということで「ロシア料理」を、またALTの先生方の母国であるイギリスとフィリピンの美味しいレシピを教えてもらうと栄養士が張り切っていました。子どもたちには、この「国際理解食」を通じて食で世界の国々への理解を広めてほしい、そして理解することで優しい気持ちや他国への興味を持ってほしいと思いますね。

当日作る食事は、児童・教職員合わせて1250食と、栄養士と給食スタッフにとっては決して楽な作業ではないと思うのですが、「いろいろな国の料理が学べて楽しい」と言ってくれています。「国際理解」と一言で言っても、レシピを提供してくださる保護者、それをアレンジする栄養士、そして実際に調理してくれる給食スタッフなど様々な人たちの支えがあってこそ、子どもたちに伝えられます。協力的なPTAやスタッフに恵まれて、子どもたちは幸せだと思いますね。

映画化もされた「自分たちの街」を誇りに

――この地域の特徴や魅力について教えてください。

2018(平成30)年9月に全国公開が決まった映画『きらきら眼鏡』の原作者・森沢明夫さんは、実は本校の出身です。『きらきら眼鏡』の原作には、例えば主人公2人の出会いが西船橋の古本屋だったり、見知った道の名前が出てきたり、西船橋から生まれた「小松菜ハイボール」を飲んでいたりと、この周辺の描写が随所に登場します。そんな風に身近な環境が小説の中に登場して、さらに映画になっているというちょっとくすぐったいような経験ができます。実現できるかは未知数ですが、将来的に森沢さんに母校訪問をしていただくことなども計画しているところです。またこの機会に、子どもたちには小説や映画といったものに興味を持ってもらい、自分たちの街「西船橋」の魅力も見直してもらいたいと思います。

船橋市立葛飾小学校
船橋市立葛飾小学校

この辺りは、JRの「西船橋」駅も「京成西船」駅も近くて通勤・通学に便利であるにも関わらず、緑の多い静かな環境です。先ほどお話しにも出ました「小松菜」は西船橋の名産品で、農地もまだまだ多くのどかな風景が広がっています。地域愛や学校愛にあふれる環境に育った子どもたちは、きっと自分が生まれ育ったこの街に誇りを持って育ってくれるでしょう。素直で優しい子どもたちを、いかに自立した人に育てていくかが私たち学校の役割です。健やかな子どもの成長のために何ができるのか、保護者や地域を巻き込みながら日々精進していきたいと思います。

船橋市立葛飾小学校 校長 河合冬樹先生
船橋市立葛飾小学校 校長 河合冬樹先生

船橋市立葛飾小学校

校長 河合冬樹先生
所在地:千葉県船橋市印内1-2-1
URL:http://www.city.funabashi.lg.jp/gakkou/0001/katusika-e/
※この情報は2018(平成30)年6月時点のものです。