千葉駅周辺エリアに暮らすChiba areaguide

スペシャルインタビュー

「そごう千葉店」が目指す、子育て世帯に心地よい公共空間と交流拠点づくり

現在は「京成千葉」駅直結している「そごう千葉店」は1967(昭和42)年に開店し、「千葉」駅前の顔として長く営業している。同店は2015(平成27)年に千葉市と地域活性化や地産地消などに関する連携協定を締結し、地域に貢献する商業施設を目指している。

今回はファミリー向けの楽しいイベントや、地域住民とともに行う街の清掃活動など、「そごう千葉店」が主体となって進めるまちづくりの取り組みについて、「そごう千葉店」の担当者の皆さまにお話を伺った。

左から「そごう千葉店」の戸塚直樹さん、石井静さん、小島進一さん
左から「そごう千葉店」の戸塚直樹さん、石井静さん、小島進一さん

「千葉」駅の東西をつなぐハブとして、裏チバの魅力を発信する「そごう千葉店」

——まずは「そごう千葉店」さんが地域と関わる取り組みを続けてこられた背景や、その原動力となっている想いをお聞かせください。

小島さん:「そごう千葉店」は以前から千葉市と連携協定を結び、地域の方々のためにさまざまな取り組みを行っています。選挙前に期日前投票所、マイナンバーカードの申請・交付の出張窓口の開設、図書館返却ポストの常設など、駅前という立地を活かしたサービスを提供しています。

そんな協力関係がある中で当時の副市長と当店の店長の間で「一緒にまちづくり活動をできないか」という話になり、2022(令和4)年度から千葉市のリノベーションまちづくり事業に参画し活動を始めました。

 

千葉市の食のブランド「千」の販売コーナーもある地階食品売り場
千葉市の食のブランド「千」の販売コーナーもある地階食品売り場

小島さん:「リノベーションまちづくり」というのは、補助金に頼らず既存のオープンスペースを有効活用する、民間主導の公民連携まちづくりです。

「そごう千葉店」は58年にわたってこの地で営業をしてきました。街が発展しなければ当店が潤うこともありません。当時とは副市長も店長も変わりましたが、まちづくり活動の重要性に対する店長の認識は変わらず、しっかり継続するようにと言われています。

当店のような大きなビルは、総合設計制度に基づいて周辺に一定のスペースを設けることが義務づけられています。「千葉」駅から「千葉市役所」側に抜ける歩行者用デッキ、国道14号に面した歩道脇のスペース、歩行者用デッキの下で「そごう千葉店」地階と繋がっている「センシティガーデン」などがあたります。緊急時の避難場所などのために確保されているスペースで普段は何もないので、そこを活用し、「千葉」駅周辺の価値向上と地域の課題解決を目指しています。

歩行者用デッキと「センシティガーデン」
歩行者用デッキと「センシティガーデン」

小島さん:歩行者用デッキは“裏チバ”への玄関口です。裏チバというのは10年ぐらい前に生まれた言葉で、駅の西側に位置する登戸、新宿、新町、新田町辺りを指します。駅前広場やバスターミナルなどがある東口に対し、個性的なお店が多いエリアです。その間にある当店は、表と裏をつなぐハブとして裏チバの魅力を発信し、「千葉」駅周辺の人々の回遊を促しています。

「センシティガーデン」から見た歩行者用デッキと「そごう千葉店」
「センシティガーデン」から見た歩行者用デッキと「そごう千葉店」

小島さん:まちづくり活動で参考にさせていただいている取り組みは2017(平成29)年から豊島区で行われている「IKEBUKURO LIVING  LOOP」というまちづくりです。これはまち全体に人の回遊や近所、近隣のコミュニティを広げていくすばらしい取り組みで、エリアマネジメント協議会が主体となり、区や地元企業と協力して街全体でやっています。いまは一企業主体の小さな活動ですが、私たちも最終的にはそうした形を目指しています。

家族みんなが楽しめる、行動範囲を広げるきっかけにもなる「KUTSUROGIBA」

——具体的にどのような活動をされているのでしょうか?

小島さん:「KUTSUROGIBA」は年4回(3月・5月・7月・10月)開催しており、ワークショップや読み聞かせ、飲食などが楽しめるイベントです。地域の皆さまの反応を見ていく中で、個性を大事にする裏チバの気風とアートの相性の良さに気づき、アートやSDGsの要素を取り入れるようになりました。

一昨年の春には、店内で使用したPOPの裏面を再利用して、お子さまの手型・足型で桜の木を描く企画を実施。また、ダンボールや忘れ傘、包装紙など廃材を活かした工作や、「みんなの白地図ひろば」と題して千葉の街並みが描かれたロール紙に千葉の街への想いを自由に描くイベントを実施しました。歩行者用デッキの通行を妨げずに気軽なアート体験を提供しました。

「みんなの白地図ひろば」の様子(提供:「そごう千葉店」)
「みんなの白地図ひろば」の様子(提供:「そごう千葉店」)

小島さん:昨秋は千葉国際芸術祭2025のプレ企画の「かえっこバザール」というお子さま向けのイベントを実施しました。不要になったおもちゃを持ち寄ってポイントに交換したり、そのポイントを他の人が持ってきたおもちゃと交換したりできるものです。同時期に千葉大学の学生にイベントの開催場所について相談され、ゲームなどを通してSDGsを学べる「こどもエコまつり」も一緒に開催しました。今年は「アートで遊ぼう」というイベントも一緒に開催しました。

「かえっこバザール in そごう千葉店」の様子
「かえっこバザール in そごう千葉店」の様子

——ファミリー層に向けた取り組みは、どのような点に力を入れていますか。

石井さん:世代を超えて、家族みんなが楽しめることを心がけています。国道14号に面した歩道脇ではショップやドリンクのスペースにして大人も楽しめるコンテンツを、「センシティガーデン」は車や自転車の通行がないため、お子さまが走り回っても安心して遊べるお子さま向けのイベントを開いています。

お母さんが買い物をしている間に、お父さんとお子さまがここで過ごせる、そうした使い方も想定しています。店内には授乳室など家族が便利に使える場所があるので、遊び中でもご利用いただけます。イベントの後にスイーツやお総菜を買ったり、レストランで食事を楽しんだりと、過ごし方の幅も広がります。

「KUTSUROGIBA」開催時の国道14号沿い
「KUTSUROGIBA」開催時の国道14号沿い

石井さん:ご家族の行動範囲を広げるきっかけづくりも意識しています。事例として西千葉にあるカフェで読み聞かせをされている絵本講師の方に「KUTSUROGIBA」で読み聞かせをしていただきました。その後店内にある書店でも、読み聞かせをすることになり今は定期的に開催しています。地域、まちの人をつなぎ「そごう千葉店」にも立ち寄っていただくきっかけを作り、相互に足を運んでもらうようにしています。

——イベントに参加された方からの印象的な声やエピソードがあれば教えてください。

石井さん:「KUTSUROGIBA」では毎回、人工芝とクッションを使って自由に過ごせる空間を設けています。子育て世代の方からは「これが常設だったらいいのに」といった声をよくいただきます。また、アート教室のチラシを見て「こんな教室が市内にあるんですね」とうれしそうに持ち帰る方もいました。お子さまと安心して過ごせる場所を探している方が多く、ここがそうした場を知るきっかけになっていると感じます。

「KUTSUROGIBA」開催時のセンシティガーデン
「KUTSUROGIBA」開催時のセンシティガーデン

裏チバグルメと地域の仲間と出会える清掃活動「SOGO Cleanup バナナプロジェクト」

——「SOGO Cleanup バナナプロジェクト」はどのような活動でしょうか。

小島さん:地域の人々と行う清掃活動です。豊島区の一般社団法人「Cleanup & Coffee Club」の清掃&コミュニケーション活動を参考に、まちづくりに関心のある方を繋ぐ場づくりができないかと考え、企業版として活動する事にしました。地域活動には、人とのつながりが必要ですから。

およそ2年間にわたり、計20回以上開催していて、毎月最終週の水曜日に行っています。地域の方と、まちづくりに興味のある方ならどなたでも参加できます。

「SOGO Cleanup バナナプロジェクト」活動の様子(引用:「リノベーションまちづくり@ちば」Instagramより)
「SOGO Cleanup バナナプロジェクト」活動の様子(引用:「リノベーションまちづくり@ちば」Instagramより)

小島さん:いくつかのグループに分かれてゴミ拾いをして、終わったら「センシティガーデン」に集まり、おやつやドリンクを楽しみながら歓談し、解散します。当初は清掃活動後、バナナジュースを飲みながら歓談をしていたので「バナナ」がプロジェクト名に入っていますが、いまは裏チバの飲食店さんにドリンクなどをご提供いただいています。これまでに「スムージー&サラダスタンドACON」のホットスムージー、「縁喜舎(えんぎや)」の焼き菓子、「BundBakery(ブントベーカリー)」のパン、「さとうてんぷら」のサーターアンダーギーをいただきました。参加する楽しみのひとつになっていると思います。

「Bund Bakery(ブントベーカリー)」のパン
「Bund Bakery(ブントベーカリー)」のパン

小島さん:知り合い同士で固まらないよう事前にグループ分けするため毎回応募制にしています。おかげさまで、学生や当店の従業員など毎回20~30人が集まっていて、そのうち7~8人ほどは初めて参加する方です。私たちも他のみなさんも、この活動を通じて多くの方々と知り合い、新しいつながりが生まれています。

百貨店から個人店まで、買い物の選択肢が豊富な「千葉」駅周辺

——「そごう千葉店」様から見た「千葉」駅周辺の、ファミリー世帯における魅力はどんなところでしょうか。

戸塚さん:お買い物が便利なところです。「千葉」駅は利用者の多いターミナルなので、駅前には大型商業施設が多くあります。駅直結の当店は雨でも使いやすいですし、お子さま連れでや荷物の多い人が腰を下ろして一息つけるベンチなどを設置しています。

大型商業施設の集まる「千葉」駅
大型商業施設の集まる「千葉」駅

戸塚さん:裏チバには個人経営のユニークなお店がたくさんありますし、東口には商店街もあります。そしてそれらの店の多くが、お客様である住民との関わりを非常に大事にしていて、距離感が近いような気がします。当店がまちづくり活動をはじめとして千葉の魅力を発信しているように、他の企業や施設も地域街への貢献意識が高いのだと思います。

——初めて訪れるファミリー世帯に向けて、おすすめのイベントや施設があれば教えてください。

戸塚さん:「KUTSUROGIBA」以外にも楽しいイベントを行っています。ゴールデンウイークや年末年始など期間限定イベントが多いのですが、キャラクターをテーマにした催事は、毎回特に人気を集めています。

また、夏休みは毎年「コトモノカレッジ」といって、自由研究にもなるワークショップや、SDGsについて楽しく学べるお子さま向けのイベントを行っています。3年生以上の小学生を対象にした「千葉市夏休みおしごと感動体験」では、館内の案内所の仕事などを体験してもらっています。三省堂書店やボーネルンドなど、各店舗でもお子さま向けのイベントをやっているので、ご来店のタイミングでチェックしていただければと思います。

「千葉市夏休みおしごと感動体験」の様子(引用:千葉市HP)
「千葉市夏休みおしごと感動体験」の様子(引用:千葉市HP)

——活動における現状の課題や強化したいこと、新たに構想されている地域子育て世代向けの取り組みがあれば教えてください。

小島さん:「KUTSUROGIBA」は今年7月で13回目を迎えます。少しずつ認知されてきましたが、今は限られた期間のみの開催で、今後は日常的な空間として定着させていくことが目標です。現状、公共空間ゆえに毎回行政の承認が必要ですが、ルールが緩和され日常化できれば、街の魅力も一層高まると感じています。私たち「そごう千葉店」と千葉センシティ、千葉市都市局都市部まちづくり課の3者で協議を重ねながら、日常化に向けた道を模索しています。また、まちを盛り上げたいと思うまちの方が自由に使えるよう、今後は申請の仕組み自体もより開かれたものにしていきたいと考えています。

今後も「そごう千葉店」の動きに注目したい
今後も「そごう千葉店」の動きに注目したい

石井さん:現在「KUTSUROGIBA」は年4回の開催ですが、今年の3〜5月は学生による企画などもあり、2週間に1回の頻度でイベントが行われました。今後は、訪れるたびに何か楽しい催しがある場として認知されるよう、開催頻度をさらに高めていきたいと考えています。

——最後に、このエリアへ住むことを検討している方々に一言お願いいたします。

小島さん:「そごう千葉店」は再来年で開店60年。あと40年ほどで100周年を迎えます。ここで子どものころに過ごした時間が、大人になった時楽しい思い出として残るよう、日々取り組んでいます。

戸塚さん:引き続き地域に根差し、地元の企業や住民の皆さんと協力し、東と西のハブ、地域の交流拠点として、千葉市の魅力を発信していきたいです。

sogo
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そごう千葉店

まちづくり推進プロジェクト リーダー 小島進一さん
まちづくり推進プロジェクト 石井静さん
ブランドマネジメント部 売出計画担当 戸塚直樹さん
所在地:千葉県千葉市中央区新町1000番地
電話番号:043-245-2111(代表)
営業時間:10:00~20:00 ※10階レストラン街は11:00~22:00
URL:https://www.sogo-seibu.jp/chiba/
※この情報は2025(令和7)年6月時点のものです。

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