「徳」を重んじる姿勢が子どもの自尊心を高める 「千葉市立新宿小学校」
JR・京成線「千葉」駅から徒歩10分ほどの場所にある「千葉市立新宿小学校」は、千葉市で最も歴史ある小学校だ。昭和初期から歌い継がれる校歌や敷地内にある千葉県立高等女学校の記念碑に、その歴史が感じられる。
今回は今年度着任した八斗孝之校長先生に、同校の特色や取り組み、近隣施設との連携や、地域の人々との関わりなどについて、お話を伺った。
創立153年の歴史と、中学校と連携した分教室運営が特色の「千葉市立新宿小学校」
——まずは「千葉市立新宿小学校」の歴史や概要を教えてください。
八斗校長先生:本校は1873(明治6)年、「千葉神社」に池田小学校として開校しました。以降、千葉師範小学校との合併や移転、改称を重ね、1947(昭和22)年に現在の「千葉市立新宿小学校」となりました。創立153年を迎える、千葉市内で最も歴史のある小学校です。
2025(令和7)年5月1日時点で児童数は797名、1学年4クラスに特別支援学級2クラスを加えた全26学級体制で、教職員は50名以上在籍しています。児童数はここ数年800名前後で推移しており、今後も大きな変動は見込まれていません。
——「千葉市立新宿小学校」の教育方針や学校の特色ついてお聞かせください。
八斗校長先生:本校の教育目標は「人のために役立つ人間になろう ~『ありがとう』と心から言える子・言われる子~」で、1986(昭和61)年から掲げています。多くの学校に勤務してきましたが、比較的ユニークな目標だと思います。知・徳・体のうち、とくに「徳」を重視しているのが特徴です。
人は、自分が必要とされ、誰かの役に立てたときに最も心が満たされ、自尊心が育まれるといいます。子どもたちにも、些細なことであっても人のために何かをする喜びを感じてほしいと願っています。
八斗校長先生:また、目指す児童像として、「豊かな心をもち、思いやりのある子ども」「自ら学び、実践力のある子ども」「心身ともにたくましい子ども」の3つを柱としています。
本校の特色として、6年生が「千葉市立新宿中学校」の敷地内にある分教室で学んでいる点が挙げられます。児童数の増加を受けて、2014(平成26)年に開設されました。6年生を担当する本校の教員も中学校で授業を行っています。
八斗校長先生:体育館やプール、グラウンドなどは中学校の施設を使っていますが、理科室・図工室・音楽室は小学校用に整備されており、図工と音楽は中学校の教諭が担当しています。給食はセンター方式で、中学校と同じメニューを提供しています。
下級生とは別の校舎で過ごす時間が多いため、最高学年としてリーダーシップを発揮する場が少ない点は課題ですが、その分「中1ギャップ」がほとんどないという大きな利点があります。
ICT活用や分散運営で多人数に対応し、幼保連携で入学後の適応を支援
——周辺の小学校に比べ児童数がかなり多いと思います。授業や学校運営に際し、工夫されていることを教えてください。
八斗校長先生:体育の授業では、2学級合同で行うなどして、校庭や体育館の使用が重ならないよう工夫をしています。また、委員会活動や防犯訓練などではICTを積極的に活用しています。例えば、なわとび集会や教職員による不審者対応訓練の様子を動画で撮影し、オンラインで共有することで、分教室にいる6年生も全校集会に参加できます。
八斗校長先生:学校運営面では、学年ごとに掃除と昼休みの時間を入れ替えて児童の活動時間を分散させたり、鬼ごっことボール遊びのゾーンを分けたりすることで、けがの防止に努めています。職員会議も基本的にオンラインで実施し、教員は学年ごとに集まって参加しています。また、授業参観も混雑を避けるため、学年ごとに時間帯を分けて行っています。
——コロナ禍をきっかけに、個人面談のオンライン化や運動会の分散開催など、多くの変更がありました。「良い取り組みは継続する」と以前伺いましたが、現在も続けていることがあれば教えてください。
八斗校長先生:運動会は現在も分散開催を継続しており、以前の3部制から2部制になりました。午前に下学年、午後に上学年を行うことで、時間が短縮され熱中症対策にもなりますし、保護者の応援時間も明確になって好評です。
八斗校長先生:また、衛生面や健康面への配慮として、手指のアルコール消毒や配膳台の消毒、給食当番のマスク着用といった習慣も引き続き行っています。
——「千葉市立新宿中学校」には分教室があり、密に連携していると思います。そのほか、近隣の保育園、幼稚園などと取り組んでいる活動はありますか。
八斗校長先生:今年度、本校は千葉市教育委員会より「幼保こ小関連教育推進校」に指定されました。とはいえ、近隣の保育園や幼稚園とはそれ以前から継続的に連携を図っています。
年に2回、近隣10の園が集まり、それぞれの教育課程について情報交換を行っています。また年3回、本校教員と園の先生方が互いの教育現場を参観する機会も設けています。
このほかにも、「年長児を小学校に招き、1年生がもてなす交流会」、「年長児の学校参観」、「保育所の懇談会に、本校教員が参加しての意見交換」などを実施しています。今後は、年長児と1年生による合同の読み聞かせ会も予定しており、その他の交流機会も積極的に検討中です。
八斗校長先生:保育園や幼稚園では自由に過ごしていた子どもたちが、小学校では、席に着いて学ぶ機会が増えます。そのギャップを少しでも和らげるため、子どもたちの育ちを共有し合い、スムーズな学校生活のスタートにつなげていければと考えています。
地域と連携した体験学習やイベントが豊富、公共施設も身近な子育て環境が整う中央区新宿エリア
——貴校は「ミッケ夏祭り」の会場にもなっています。他に地域の方との関わりがありましたら教えてください。
八斗校長先生:地域を素材とした学びは多く、例えば1年生の公園探索、2年生のまち探検、3年生のスーパーや「千葉市立中央図書館」の見学など、授業を通じて地域の人々と交流する機会があります。子どもたちはそれらの場で、地域で働く方々とふれあい、さまざまなことを学んでいます。
また、PTAのバザーでは、地域のダンスチームや野球チームによる発表の場を設けたり、ZOZOをはじめとした市内企業とのコラボ企画を行ったりと、地域全体で学校を盛り上げています。
八斗校長先生:さらに「セーフティウォッチャーさんよろしくねの会」では、登下校の見守りをしてくださっている地域ボランティアの皆さんに、子どもたちから直接感謝の気持ちを伝えています。ご高齢の方も多いですが、子どもたちの元気なあいさつを楽しみにしてくださっているようです。
——小学校のある中央区新宿エリアは、子育ての観点からどんなところが魅力でしょうか。おすすめのポイントがありましたら教えてください。
八斗校長先生:千葉市の中心街に近接し、「千葉」駅、「千葉市役所」、「千葉市中央図書館」、「Qiball(きぼーる)」、「千葉市美術館」、プロバスケットボールチームの本拠地である「ポートアリーナ」など、多くの公共施設が徒歩圏内にある非常に恵まれた地域です。特に「Qiball(きぼーる)」内に入る「千葉市科学館」は身近な科学を楽しむワークショップから海の底、地の果て、宇宙の謎に迫る展示があり、子どもたちの知的好奇心を揺さぶる場所です。
——最後に、このエリアへの住み替えを検討している方へ向けてメッセージをお願いします。
八斗校長先生:学校教育の推進に理解を示す方が多い地域で、子どもたちは素直で明るく、気持ちの良い挨拶ができる子ばかりです。本校の目の前にある「新宿公園」にはプロムナードも整備されていますし、お子さんのいるご家庭も気持ちよく暮らせるのではないでしょうか。

千葉市立新宿小学校
八斗孝之校長先生
所在地:千葉市中央区新宿2-15-1
電話番号:043-242-0631
URL:https://www.city.chiba.jp/school/es/001/index.html
※この情報は2025(令和7)年6月時点のものです。