アーカイブ―柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)に注目!

第1回:“科学”を通じて人と人とがつながるあらたな地域交流のかたち(2015/07取材)

KSELの活動に注目!
柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)
会長 羽村太雅さん

「東京大学」の大学院生を中心に2010(平成22)年6月に発足した「柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL:Kashiwanoha Science Education Lab.)」。“科学コミュニケーション活動を通じた地域交流の活性化”を目指して、最先端の研究に携わる学生たちが語る“科学”の面白さは、大学と街、人と人との交流を促すあらたなコミュニケーション活動の手段として注目を集めています。今回は国立天文台の広報普及員として働く傍ら、KSEL(ケーセル)の会長としても活躍する羽村太雅さんに、団体発足の経緯や目的、活動の実際についてお話を伺いました。

ーまず「柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)」の設立の経緯について教えてください。

東京大学 柏キャンパス
東京大学 柏キャンパス

柏の葉には本郷、駒場に次ぐ第3のキャンパスとして2000(平成12)年に「東京大学柏キャンパス」が誕生しました。新たな学問分野の発展に取り組む「新領域創成科学研究科」を中心に最先端の研究が行われています。

しかしながら地域の方々にとっては「何をやっているところか分からない」「何だかよくわからないけど難しそう」といったイメージばかりが先行し、大学と地域との間にはコミュニケーション不足による隔たりのようなものがありました。

2011年「駅前出張サイエンスカフェ」の様子
2011年「駅前出張サイエンスカフェ」の様子

一方、大学院生にとっては「自分の研究分野についてもっと知って欲しい」「科学ってこんなにも面白いものなんだ」と“科学”の楽しさを伝えたい、共感し合いたいという純粋な想いがありました。そこで大学院生の有志により2010(平成22)年6月に発足したのが「柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)」です。

活動内容は「駅前出張サイエンスカフェ」の企画・運営にはじまり、小学生を対象とした実験教室や大人を対象とした講演会など、地域の方々を対象としたさまざまな活動を行っています。

ーサイエンスカフェとは?具体的な取組みの内容について、対象年齢や開催頻度についても教えてください。

大人向けサイエンスカフェ「高齢者社会ってどんな社会?」の様子
大人向けサイエンスカフェ「高齢者社会ってどんな社会?」の様子

科学の楽しさについて気軽に語り合える“場”を設けるのが「サイエンスカフェ」の目的です。柏の葉地域の各所で開催されるKSEL恒例イベントのひとつとなりました。ひとことで“科学”とは言っても、手づくりロケットや地球温暖化、ヨーグルトによる腸のはたらきなど、取り扱うテーマは多岐にわたり、対象年齢や方法論もまったく異なるさまざまな取り組みを行ってきました。内容によって、小学生向けのほかにも、大人を対象とする会もあります。

小学生向けに行った「柏の葉キャンパスシティ・夏休み自由研究ツアー」で雲を作る
小学生向けに行った「柏の葉キャンパスシティ・夏休み自由研究ツアー」で雲を作る

「サイエンスカフェ」の開催についてはホームページなどでもお知らせいたしますが、学業のある大学院生を中心とした活動のため、開催は不定期です。とくに修士論文執筆や学会などで忙しくなる年末から春頃までの活動は難しくなります。頻度は季節によって異なり、夏休みの間は子ども向けイベント依頼が多く、大忙しです。

柏の葉公園で行う「セミの羽化を観察しよう」の一幕
柏の葉公園で行う「セミの羽化を観察しよう」の一幕

取り扱う内容については最先端の科学的成果から、科学の原点に立ち返る自然体験まで、多岐にわたります。団体の発足当時から“学生自身が好きなことを、好きなようにやってみる”という気風があるため、常にあたらしいテーマや切り口で“科学”にアプローチしているのも「KSEL」の特徴のひとつです。

ー団体発足から5年が経ちますが、とくに変わったと感じることはありますか?

KSELのメンバー
KSELのメンバー

まず柏キャンパスの大学院生を中心としたメンバーに、活動の噂を聞きつけた本郷キャンパスの学生や他大生、イベントに参加して興味を持った地域の方、あたらしくこの街に引越してきてコミュニティを探していた社会人などが加わり、メンバーの多様性が増しました。年齢も高校生から定年退職を迎えた方まで幅広く、“科学コミュニケーション”というひとつのテーマでつながって一緒に活動をしています。

「エネルギーの見える化」実験の様子
「エネルギーの見える化」実験の様子

また、発足当初は最先端の研究にまつわる講演会が主でしたが、最近は日常生活のなかで感じる不思議や疑問に迫る“科学の原体験”ともいうべき身近な“自然体験”を組み込んだ実験教室などを増やしています。

駅前で道行く人と星空観察
駅前で道行く人と星空観察

「虹ってどうして七色に分かれるんだろう?」とか「星ってなんでまたたくんだろう?」とか、科学に興味をもつきっかけとして、この原体験が非常に重要であると考えています。
原体験を通じて「疑問」を抱き、それを「実験」するとともに「最先端の知見」を提供する、そんな“最先端の自然体験プログラム”が増えています。

「理科の修学旅行」ではみんなで登山も!
「理科の修学旅行」ではみんなで登山も!
「理科の修学旅行」ではみんなで登山も!

その代表格「理科の修学旅行」は、優れた自然体験プログラムを表彰する「トム・ソーヤースクール企画コンテスト」で優秀賞に選ばれました。

ー最後に地域の方へメッセージをお願いいたします。

東大の研究者がレストランで演奏するクリスマスコンサートも行った
東大の研究者がレストランで演奏するクリスマスコンサートも行った

以前は科学が大好きで知識も豊富な、いわゆるコアな常連さんが参加者の多くを占めていましたが、最近では科学大好きっ子に最先端の世界を伝える活動から、科学にまったく興味の無い方にも興味をもってもらえるような工夫を凝らした活動まで幅広く実施して、いろいろな方が参加しやすい雰囲気になりました。

街まるごと科学館(エクセドラ)
街まるごと科学館(エクセドラ)

このたび、柏の葉の街全体を科学館に見立てた「街まるごと科学館(エクセドラ)」という初の試みを2015(平成27)年6月から始めました。街なかの各所に展示を設置するとともに、「中央展示室」にはスタッフが常駐しています。6月・7月には「はやぶさ」帰還での盛り上がりも記憶に新しい小惑星にまつわる企画展を行いました。

「中央展示室」にお越しいただいた方は、企画展のテーマにである「小惑星」に関することだけではなく、さまざまな質問をなさいます。例えばお子さんを連れたご家族からは「どうすれば(あなたのように)そんなに科学に興味を持つようになるんですか?」と、よく質問をいただきます。小学生の頃に火星探査機着陸の映像を目にした体験や、その後「宇宙人を見つけたい」と真剣に考えるようになったことなど、何でもお答えしています。

創立5周年パーティでゲストからKSELへのお祝いメッセージ
創立5周年パーティでゲストからKSELへのお祝いメッセージ

団体発足時に掲げた「科学を通じて街の交流を活性化させる」という理念が、いま徐々に現実のものとなっていることをぜひ一緒に体感していただければと思います。新メンバーも随時募集しておりますので、興味や関心のある方はぜひお問い合わせください。

柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL) 会長 羽村太雅さん
柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL) 会長 羽村太雅さん

今回、話を聞いた

柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)

会長:羽村太雅さん

http://udcx.k.u-tokyo.ac.jp/KSEL/

※2015(平成27)年7月実施の取材にもとづいた内容です。記載している情報については、今後変わる場合がございます。

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