支えてくれた地域の人に恩返しする気持ちで子育て世帯をサポートする「八幡親子つどいの広場」

2025年2月、「京成八幡」駅から徒歩4分の葛飾八幡宮の参道横に、市川市の新たな施設「八幡市民交流館 ニコット」がオープンした。1階に移転した「八幡親子つどいの広場」を訪ね、スタッフリーダーの花蜜ユカさんに、活動内容や移転で変わったこと、地域の魅力などについてお話を伺った。

「八幡市民交流館 ニコット」
「八幡市民交流館 ニコット」

登録された方のほとんどがリピート利用するという「八幡親子つどいの広場」

――まず「八幡親子つどいの広場」の歴史や概要についてお聞かせください。

花蜜さん:市川市から委託を受けて「親そだちネットワーク ビジー・ビー」というNPO法人が2007(平成19)年から運営しています。分庁舎の解体などで何度か移転し、今回は4度目の引っ越しで「八幡市民交流館 ニコット」に移ってきました。親子で安心して遊べるところであり、子育て仲間と出会ってさまざまな情報交換ができる場でもあります。

対象は主に0~3歳の乳幼児とその保護者、妊婦さんですが、上のお子さんを連れての利用も可能です。授乳やおむつ替えができる「赤ちゃんの駅」としてもご利用いただけます。

手作りおもちゃを手にする花蜜さん(中央)とスタッフの方
手作りおもちゃを手にする花蜜さん(中央)とスタッフの方

――施設の基本的な利用方法、利用状況を教えてください。

花蜜さん:イベントには予約が必要なものもありますが、広場の利用は予約不要です。利用者さん同士が交流しやすいよう、利用時にはお子さんに名札をつけてもらっています。1日30組ほどの親子にご利用いただいており、毎日のように来所される方もいれば、隔週利用の方もいらっしゃいます。リピート率は高く、新規登録された方はほぼ再来所しています。午前中は1~2歳児、午後は0歳児が多い印象です。

授乳スペースも用意された、奥の赤ちゃんコーナー
授乳スペースも用意された、奥の赤ちゃんコーナー

――利用者にはどのような方が多いでしょうか。

花蜜さん:多くはマンション住まいの核家族ですが、ご両親が近所に住んでいる方もいて、おじいちゃん、おばあちゃんと来る子も珍しくありません。フレックス制やリモートワークの普及もあって、平日にパパと一緒に来る子も多いです。土曜日のイベント「パパタイム(ファミリータイム)」にはご夫婦で参加される方が多いですよ。近隣の方がほとんどですが、駅から近いので市外から来る方もいらっしゃいます。

真新しい建物と解放感ある空間や食事スペース、併設の公園などが魅力の「八幡市民交流館ニコット」

――「八幡市民交流館ニコット」へ移転され、変わったところなどをお聞かせください。

花蜜さん:新しい施設ということもあって、利用者さんが圧倒的に増えました。それまでは1カ月の平均利用者数が1,300人ぐらいだったのですが、2月15日のオープンから11日間で1,600人いらっしゃっているので、すごいペースですね。また、すぐ横に公園がオープンして体を動かして遊べるようになったからでしょうか。今までは比較的0~2歳児が多かったのですが、3歳児が増えましたね。

移転オープン以降、連日多くの利用者でにぎわう
移転オープン以降、連日多くの利用者でにぎわう

花蜜さん:窓際に気持ちのいい食事スペースができたので、以前より落ち着いて食事をしていただけるようになりました。同じぐらいの月齢の子と一緒に食事ができると、「こんなものも食べられるんだね」など、保護者同士で食について話せるので良い環境だと思います。ランチタイムは設けておらず、都合のいいタイミングで使っていただけます。

自由に使える飲食スペース
自由に使える飲食スペース

――新施設に対する利用者さんの反応はいかがでしょうか?

花蜜さん:フリースペースやカフェなども備わっていて、喜ばれています。「つどいの広場」に関しては開放感のある造りが好評です。すぐ横に公園があるので、子どもが室内で遊ぶのに飽きたりぐずったりしても、すぐに外遊びに連れ出せる点も便利に感じていらっしゃると思います。

天井が高く開放的な空間が、利用者に好評
天井が高く開放的な空間が、利用者に好評

――多くのイベントを開催されていますね。どのようなイベントか教えていただけますか? また、特に人気のイベントがあれば教えてください。

花蜜さん:「ゆっくりマタニティタイム」は、プレママやプレパパの交流会です。赤ちゃん人形の抱っこ体験や沐浴講習などを実施しています。「のんびり赤ちゃんタイム」は、わらべうたを楽しんだり、子どもにまつわるうれしい出来事や気になることをおしゃべりしたり、同じ月齢の子どもを持つ親同士で交流を深めます。

これらの定期イベントに加え、月に1回のイベントをやっています。保健師さんなどに来ていただいて行う保護者向けの講座もありますが、人気があるのは楽しく遊べるものですね。特にクリスマスやハロウィンといった季節のイベントは人気です。

「ニコット」横に併設されている公園
「ニコット」横に併設されている公園

――施設の特徴や独自の取り組みを教えてください。

花蜜さん:利用者さんの要望で始まった「リユースコーナー」は、開所して2年目ぐらいからずっと続いています。利用者さんが不要になったものを持参し、必要な利用者さんが持ち帰っています。絵本などもありますが、子どもが大きくなって着られなくなった服が多いですね。特にコロナ禍は、お店が閉まっていたり、お買い物に行きづらかったりして、高い需要がありました。今も多くの方が利用されています。

子ども連れに優しい人が多く、温かい言葉をかけてもらえる本八幡エリア

――地域の方と連携した取り組みなどあれば教えてください。

花蜜さん:地域で活動するボランティアの方が、子どもたちをみてくださったり、親御さんと話してくださったり、イベントの講師として来てくださったりしています。ファミリーサポートでの利用も受け入れています。また、毎年近隣の大学の学生さんを実習で受け入れています。今日は手作りおもちゃを持ってきてくれました。

近隣ではないのですが、看護学生の受け入れも行っており、学生さんにとってもここでの体験は良い学びになっているようです。あと、近所の英語の先生がふらっと訪ねて来ることがあります。Hello!と利用者さんに話しかけておしゃべりしたり、子どもたちに歌を歌ってあげたりして帰っていきます。この地域らしい温かさを感じる瞬間ですね。

施設の遊具で遊ぶ親子
施設の遊具で遊ぶ親子

――市川市、特に本八幡エリアで子育てをするメリットはどのようなところにありますか。

花蜜さん:一番は、地域の方が子育て世帯に対して優しいところですね。この辺りには古くから住んでいるお年寄りも多く、子どもや赤ちゃん連れのパパママを温かい目で見てくれます。あまり寛容でない時代ですが、先日この辺りに引っ越して来られた利用者さんが、八幡では子どもにも親にも温かい言葉をかけてもらえるとおっしゃっていました。

私も以前からこの辺に住んでいるのですが、ベビーカーで行ける範囲に子どもの遊び場がたくさんあります。わざわざ自転車で出かける必要がないので、ありがたいですね。また、昔から市川市は読書を推奨していて、小中学校などで読書活動に力を入れています。この辺に学力の高い学校が多いのは、子どもの頃から培われた読書習慣が下地にあるのかもしれません。

「つどいの広場」入口
「つどいの広場」入口

――本八幡駅周辺の魅力やファミリーにおすすめのスポットを教えてください。

花蜜さん:この辺りの魅力はなんといっても利便性の高さでしょう。京成、JR、都営線と3線使えますし、スーパーもたくさんあり、非常に暮らしやすいです。ファミリー層におすすめのスポットは、市川市生涯学習センター「メディアパーク」ですね。「中央こども館」や「市川市中央図書館」併設の「こどもとしょかん」があります。「中央こども館」で遊んで「ニッケコルトンプラザ」で食事をするといった流れがこの辺りで暮らすファミリーの定番ではないでしょうか。

駅の近くには小さな子を遊ばせるのにちょうどいい「八幡児童公園」があり、近くの保育園に通う子どもたちもよく遊んでいます。また、市川市には子ども用のミニプールが付いた公園が多く、私自身も子どもが小さい頃はよく利用していました。この辺りだと「北方第二公園」「子の神西公園」「高石神公園」「東大和田公園」などに併設されています。施設の目の前には「葛飾八幡宮」があるので、お宮参りも駅近くでできますよ。

木に見立てた本棚が印象的な絵本コーナー
木に見立てた本棚が印象的な絵本コーナー

――これからこのエリアに住みたいと考えている方々に一言お願いいたします。

花蜜さん:八幡は子どもの遊び場が多く、地域の人が温かいところです。それに、私たちもいます。遊び場として利用いただくだけでなく、困りごとがあったら、地域のお母さんみたいな感じで頼っていただけたらと思います。ここのスタッフの半分以上はもともと施設の利用者だった人で、みなさんの役に立ちたいと思っている人ばかりです。私も他のスタッフも、地域の人に支えてもらって自分の子どもを育ててきたので、お返ししたい気持ちがあるんです。

当時助けてくださった人に直接お返しすることはできませんが、次の子育て世代をサポートすることで地域に還元できるのかなと。そうした気持ちが世代から世代に受け継がれて、この地域を巡っている気がします。私たちも広場から離れたら地域で暮らす住民の一人。同じ地域の仲間としてもみなさんを支え、互いに協力し合っていければと思います。

花蜜ユカさん
花蜜ユカさん

八幡親子つどいの広場

花蜜ユカさん
所在地:千葉県市川市八幡4-2-1 八幡市民交流館ニコット内
電話番号:080-3499-7433
利用時間:月~土曜日 10:00~16:00
休館日:日曜日、祝日、毎月最終月曜日、12月28日~1月4日
URL:https://www.city.ichikawa.lg.jp/chi01/1111000250.html
※この情報は2025(令和7)年4月時点のものです。