船橋市教育委員会 歴史文化財係 インタビュー

交通や物流の要衝として発展した旧葛飾地域のあゆみ

5路線が乗り入れる「西船橋」駅と、京成本線「京成西船」駅、計2駅6線が利用できる西船一帯。交通の便がいいことはよく知られているが、このエリアにはもうひとつの顔がある。多くの遺跡だ。船橋市には約200か所以上の遺跡があり、「船橋市立葛飾中学校」周辺では、旧石器時代の石器や平安時代の鏡などが出土している。そんな西船から印内(旧葛飾地域)の歴史について、船橋市教育委員会 生涯学習部 文化課 歴史文化財係の岡﨑光司さんに伺った。

今も残る「葛飾」の地名が歴史を感じさせる

「葛飾町」時代の略地図 船橋市教育委員会 提供
「葛飾町」時代の略地図 船橋市教育委員会 提供

――西船周辺は、かつては葛飾という地名だったそうですね。

はい、古代から下総国葛飾郡に含まれるところで、昔からこの地にある「葛飾神社」に由来するといわれています。1889(明治22)年に西海神や印内などの村が合併して「葛飾村」が成立し、1931(昭和6)年に「葛飾町」となりました。その後1937(昭和12)年に近隣の村や町が合併して船橋市が生まれたんです。
「京成西船」駅も、1987(昭和62)年までは「葛飾」駅だったんですよ。現在も「葛飾小学校」「葛飾中学校」「葛飾公民館」「葛飾幼稚園」などの名称として残っています。

船橋市の歴史を知ってもらうため、市内各所にある文化財説明板
船橋市の歴史を知ってもらうため、市内各所にある文化財説明板

――現在の西船、印内の地域では、遺跡も多く発見されているようですが、どれほど昔から人の暮らしの形跡があるのでしょうか。

「印内台遺跡群」で、約35,000年前の石器が発見されています。つまり、旧石器時代にはこの地で生活していた人がいたわけです。氷河期の厳しい環境のもと、人々は石を割って道具を作り、移動しながら狩りをしていたと考えられています。

また、この地にあった「印内台遺跡群」とすぐ隣の「東中山台遺跡群」と合わせて500軒以上もの竪穴住居跡が発見されています。奈良・平安時代には、この場所に大規模な集落がありました。馬具、砥石、硯、日本で最初の流通貨幣とされる「和同開珎(わどうかいちん)」、役所の公文書を漆の入った土器の蓋に再利用した漆紙文書など珍しい優品も出土していて、この頃から交通や物流の要所だったことがわかります。

豊富な漁場の近い台地が人を引き寄せた

資料を見せながら、船橋市の歴史と文化について説明する岡﨑さん
資料を見せながら、船橋市の歴史と文化について説明する岡﨑さん

――地理的な特徴はありますか。

大きく2つあります。台地と低地があることと、東京湾に面していること。台地は水はけが良いですよね。それに昔は、敵に攻め込まれにくいことも大きなメリットだったはずです。台地上には獣や木の実などの動植物が豊富でした。また、東京湾では縄文時代から豊富な魚介類が獲れましたから、「山の幸」「海の幸」があり、食べ物にも困らなかったでしょう。

――昔から暮らしやすい場所だったのですね。

そのとおりです。生活に適した条件がそろっていたため人が集まり、同時に物の往来も増え、交通が発達していったのでしょう。前述の遺跡群からは、中世に地侍が住んでいた屋敷跡や幕末の墓なども見つかっていて、現代にいたるまでずっと人が住み続けてきたことがわかります。

――中世・近世はどのような発展を遂げてきたのでしょうか。

古代から東海道が通り、さらに中世(鎌倉~室町・戦国時代)には海上交通が発達し、国内はもちろん、中国との貿易も盛んに行われていたようです。近世には陸路がさらに発達。佐倉道や行徳道、上総道などに加えて木下街道や御成街道といった街道も整備され、水陸交通の要所として、宿場町としても繁栄しました。

歴史と文化を身近に感じられる街

葛飾神社のクロマツ 船橋市教育委員会 提供
葛飾神社のクロマツ 船橋市教育委員会 提供

――現在の西船エリアで、歴史を感じられる場所や見学できるところはありますか。

たくさんありますよ。有名なのは「宝成寺」にある「成瀬氏の墓」。江戸時代初期に旧葛飾地域一帯を治め、尾張犬山城主も務めた成瀬氏のお墓です。『江戸名所図会』にも描かれている樹齢約400年といわれる「葛飾神社」のクロマツ、どんな日照りの時でも枯れないという言い伝えが残る「葛羅の井」なども、気軽に立ち寄れます。

さまざまな文化財スポットを教えてくださる岡﨑さん
さまざまな文化財スポットを教えてくださる岡﨑さん

――西船橋エリアの魅力を教えてくだい。

歴史ある寺社がたくさんあるので、寺社巡りが楽しめるところでしょう。「京成西船」駅近くの「正延寺」、「勝間田公園」の隣にある「葛飾神社」、毎年夏まつりで賑わう「印内八坂神社」など、多くが街道沿いや住宅地の中にあるので、気軽に訪ねられるのが魅力です。

200メートルの参道を誇る浅間神社
200メートルの参道を誇る浅間神社

富士山信仰と関わりの深い「浅間神社」は鎮守の森が素晴らしいので、森林浴がてらお参りに行くのもいいかもしれません。昭和初期頃までは、境内から富士山を望めたそうです。昔から登山参拝する人が多かったといわれ、現在でも毎年7月1日の富士山の山開きには祭礼が行われ、屋台が連なって賑わいます。

『木造五智如来坐像』 船橋市教育委員会 提供
『木造五智如来坐像』 船橋市教育委員会 提供

仏像好きの方には、「正延寺」の秘仏「木造五智如来坐像」を是非ご覧になっていただきたいと思います。平安時代に彫刻されたといわれる、由緒ある仏像。全国的にも胎蔵界五仏の彫像は極めて少なく、中でも五体すべてそろっているのは貴重です。千葉県の有形文化財として指定されており、毎年元日に見ることができます。

船橋市教育委員会 岡崎さん
船橋市教育委員会 岡崎さん

船橋市教育委員会

生涯学習部 文化課 歴史文化財係
岡﨑光司さん
所在地:船橋市湊町2-10-25
電話番号:047-436-2898
URL:http://www.city.funabashi.lg.jp/
※この情報は2018(平成30)年5月時点のものです。