コロナ禍を越えてさらに進化していく「東京メトロ東西線」
都内と千葉県を東西に結ぶ東京メトロ東西線。3線と相互直通運転をしているため利便性も高く、1日の平均輸送人員は東京メトロの路線の中でも最多の路線だ。今回は東京地下鉄株式会社広報部の内藤遥佑さんを訪ね、東西線の概要や取り組み、魅力についてお話を伺った。
東京メトロで唯一千葉県内を運行する「東西線」
――まずは、東京メトロ東西線の沿革や、特徴についてをご説明いただけますでしょうか?
内藤さん:東京メトロ東西線は「中野」~「西船橋」駅間の 23駅、30.8キロの営業キロを持つ東京メトロでは唯一千葉県内を運行する路線で、東葉高速線、JR総武線、JR中央線の3線との相互直通運転を行っています。1日の平均輸送人員は998千人(2020年度)と東京メトロの路線の中でも最も多く、路線カラーはスカイ、路線記号は「T」となっています。
東西線は東京メトロでは4番目に古い路線で、当時、都市計画5号線として帝都高速度交通通営団が日比谷線の次に建設に着手しました。1962(昭和37)年に着工し、東京を東西に横断する意味で「東西線」との名称がつけられ 1964(昭和39)年に「高田馬場」~「九段下」駅間が開業しました。その後、建設が進み1969(昭和44)年に「東陽町」駅から「西船橋」駅間が開通し、「中野」~「西船橋」駅までの20駅が全線開業となりました。当時から快速運転を行っており、日本の地下鉄としては初めての事でした。全線開業後も新駅として、「西葛西」駅(1979年)、「南行徳」駅(1981年)、「妙典」駅(2000年)がそれぞれ開業し、現在の23駅となっています。
地下鉄路線ではありますが、東西線は東京メトロで最も多く地上駅(9駅)、地上区間(13.1km)を持ち、長大な高架区間を走ることが特徴です。沿線の高架下には、地下鉄博物館や、東京メトロの運営する野菜工場、アウトドアフィットネスクラブなどもあります。また、東京メトロの車両としては、05系、07系、15000系車両の3種類が営業運転を行っており、一部の車両は朝ラッシュ時等の混雑対策としてワイドドアが導入されています。
コロナ禍での変化とポストコロナにおける対策
――新型コロナウイルス感染拡大によって、社会の動きが大きく変わったかと思います。東京メトロではどのような変化がありましたか?
内藤さん:新型コロナウイルスの影響により、東京メトロ全体の輸送人員はコロナ禍以前と比較し通年で大きく減少しており、特に緊急事態宣言のあった 2020年4月から5月において大幅に減少しています。その後の減少幅は縮小していくものの、2021年1月や5月に再度緊急事態宣言が発令されると減少幅が再拡大しました。乗客の乗車時間帯については新型コロナウイルス感染症の拡大以降、ラッシュ時間帯に比べ前後の時間帯の減少幅が低く、時差通勤やテレワーク等の影響が見受けられました。東西線に注目すると、1日の平均輸送人員は、2019(令和元)年度では1,440千人でしたが、2020(令和2)年度には「998千人」となり、約400千人減少しています。
――ポストコロナにおける対策や取り組みなどもありますか?
はい、東京メトロでは新型コロナウイルス感染症の対策として、お客様に「安心な空間」を提供する為、全駅、全車両の抗ウイルス・抗菌処置をはじめとした以下の取組みを実施しております。
また、「デジタル」に関する取組みの一つとして、列車の出発時に車両側面をデプスカメラ(※)で撮影し、AI により列車混雑状況をリアルタイムで計測する「列車混雑計測システム」を複数駅に展開しています。今後はお客様にリアルタイムな列車混雑状況を提供する為、「東京メトロ my!アプリ」への反映を全線で行っていく予定です。
(※)デプスカメラ:奥行きの情報を取得する深度センサーを内蔵したカメラ。
混雑率緩和のための取り組みも実施
――東西線で実施されている「オフピークプロジェクト」について教えてください。
内藤さん:オフピーク通勤を促進する取組みは東西線において2007年より「東西線早起きキャンペーン」としてスタートしました。
東西線では可能な限り輸送力を増強し、1時間に27本の高密度な運行を実施していましたが、最混雑区間で200%程度の混雑率となるなど、混雑緩和が喫緊の課題でした。そこでスタートしたのが東西線早起きキャンペーンです。駅に設置した専用端末にIC乗車券をタッチした回数によってお客様に特典がある取組みで、当時約4,500人のお客様に継続的にご参加いただきました。その後、自動改札機へのタッチのみで参加できるシステムを導入する等、より気軽にご参加いただくための改良を重ね、2019年からはメトポのポイントを進呈する東西線オフピークプロジェクトへ刷新いたしました。
開始から今年で14年を迎えるオフピーク促進の取組みについては、お客様の声やご利用状況などを踏まえながらリニューアルを重ね、今日の「オフピークプロジェクト」まで歴史が続いています。
2019年度の東西線オフピークプロジェクトでは、2007年の東西線早起きキャンペーンでのおよそ2.7倍となる約12,000人のお客様に継続してご利用いただいており、約3%の混雑率引き下げ効果があったものと推定しています。
引き続き、より多くのお客様にオフピークプロジェクトにご参加いただけるよう、努めて参ります。
アクセス利便性も高く、多彩な魅力を持つ「東西線」
――貴社で運営されている他路線と比較して、東西線の強みや魅力だと感じるのはどういった点でしょうか?
内藤さん:東西線は、東京メトロの路線の中で営業キロが最も長く、唯一千葉県内を運行し、千葉県や東京西部からの通勤・通学等にも便利なことから、最も輸送人員が多い路線です。
また、相互直通運転に加え、快速運転等も行っている他、東京の地下鉄で副都心線を除くすべての路線と乗換えをすることができる路線でもあります。
東西線沿線は、日本を代表するビジネス街、グルメやショッピングを楽しめる街、自然が多く住みやすい街など多彩な魅力があり、それらの街へアクセスしやすいことも東西線の特色の一つです。
――東西線の今後の計画や展望がありましたら教えていただけますか?
東京メトロでは、現在ホームドアの設置を進めており、2025年度には東西線各駅も含めた全駅での設置が完了する予定です。その他にも混雑緩和のため、輸送改善の取組みとしてオフピークプロジェクト等のソフト面での対策に加え、「南砂町」駅の線路・ホーム増設等の大規模改良、「飯田橋」駅~「九段下」駅間の折返し設備整備に加え、「茅場町」駅のホーム延伸等の大規模改良などのハード面での対策についても順次進めております。
東京メトロでは、これからも東西線沿線の多様な魅力と価値を創出し続けるべく様々な取組みを行ってまいります。

東京地下鉄株式会社
広報部広報課 内藤遥佑さん
所在地 :東京都台東区東上野3-19-6
URL:https://www.tokyometro.jp/
※この情報は2021(令和3)年7月時点のものです。